SCS評価制度と経済安全保障
SCS認証制度
2026年度末から、SCS認証制度が始まる。SCS認証制度についての詳しいことは、経済産業書のSCS認証制度のページとIPAのSCS認証制度のページを確認してもらいたい。
大雑把にいうと、取引先に対して自組織のセキュリティの十分さを証明するために、SCS認証を受ける、という制度である。イギリスのCyber EssentailやアメリカのCMMCの日本版みたいなものかもしれない。
SCS評価制度は、野心的な取り組みであることは間違いないのだが、セキュリティ業界・IT業界の外での広がりについて、個人的に多少不安に思っていた。新しい制度を導入したはよいけど、事業会社に受け入れられない場合には、制度自体が広がらないのではないかと考えていた。
SCS認証制度と経済安全保障
ところが、事業会社に受け入れられる可能性が出てきた。経済安全保障の安定供給確保(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号)第8条第1項)との関係のなかでである。
2026年8月から、経済安全保障関係のガイドライン(手引)のパブコメが出てきたのだが、その中でSCS認証制度を推奨している。
例えば、2026年9月5日段階では、次のような経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律第八条第1項を根拠にした取組方針で、SCS評価制度の導入を推奨事項としている。
- 重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針
- ロケットの部品に係る安定供給確保を図るための取組方針
- 人工衛星に係る安定供給確保を図るための取組方針
- 半導体に係る安定供給確保計画を図るための取組方針
- 先端電子部品に係る安定供給確保を図るための取組方針
- 航空機の部品に係る安定供給確保を図るための取組方針
- 蓄電池に係る安定供給確保を図るための取組方針
- インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラムに係る安定供給確保を図るための取組方針の改正案
- 工作機械及び産業用ロボットに係る安定供給確保を図るための取組方針
- 永久磁石に係る安定供給確保を図るための取組方針改定(案)
- 抗菌性物質製剤に係る安定供給確保を図るための取組方針
- 船舶の部品に係る安定供給確保を図るための取組方針
- 肥料にかかる安定供給確保を図るための取組方針
文面としては、下記の様に、JC-STARとSCS評価制度を認定供給確保事業者とその供給事業者に対して奨励する内容となっている。
具体的には、経済産業大臣は認定供給確保事業者に対し、以下について推奨するものとする。
(1) 令和9年3月から運用開始予定である、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」(以下「SCS 評価制度」という。)に基づく★4の取得
(2) 「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度」(以下「JC-STAR制度」という。)に基づくラベルを取得した IoT 製品の使用(ルーター等の通信機器及びネットワークカメラについては★3を取得した製品の使用) (3) 調達先 に対する、SCS 評価制度の★3又は★4(調達先の実態に応じて認定供給確保事業者が判断)の取得推奨 (4) 調達先に対する、JC-STAR 制度に基づくラベルを取得した IoT 機器の使用推奨
(重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針案より)
対象となっているものは、経済産業省の管轄下にあるものが多いが、抗菌性物質製剤(厚生労働省)、船舶(国土交通省)、肥料(農林水産省)と、比較的広い分野で、SCS認証制度を推奨している。
SCS認証制度の今後の展望
安定供給確保については、良くも悪くも補助金とセットになっている制度である。幅広い分野で、補助金マターの方針の中で、SCS認証制度が取り上げられた。この取り組みにより、ITやセキュリティ以外の分野でのSCS認証制度の知名度の向上を期待するとともに、より、多くの組織にとってSCS認証制度への取り組みを促すことになるのではなかと考えている。
もちろん、取組方針(案)の中では強制ではなく推奨や勧奨という形をとっているため、SCS認証制度が必ず普及するという保証はない。しかし、多くの分野で多くの省庁から推奨を得た、という点で、SCS認証制度普及の将来像が見えてきたといえるのだろう。
また、実際にSCS認証制度が実際に機能する、日本社会のサイバーセキュリティに寄与する制度となるには、今後の各組織や我々情報処理安全確保支援士の取組が重要であることは、言うまでもないだろう。